保育業界に新しい風を入れるには…?
前回のVol.5では、保育者一人ひとりに、どんな変容の可能性があるのか?実際に変容を起こすために、何が必要なのか?そんなお話を伺ってきました。
後半には、保育者のキャリアの特徴から、学びのための制度がもっと充実していれば…。そんな話も出てきた前回。(Vol.5はこちら)
今回は、もう少し踏み込んで、園という組織全体の話、日本国内の園と、教育環境全体が良くなっていくには?
少し俯瞰した視点も持ちながら、保育業界の変容について一緒に考えていきました。
保育園・幼稚園・こども園 が、「いい園だな」と思えるには?
―― 実際に保育者として働く人からみた、園に対しての ”良い・悪い” っていう感覚があるように感じているのですが、その評価って、一番は何に左右されるんですか?
園長なのか?なんなのか?
かずませんせい あー、なるほど。難しいなぁ。
色々ありますけど、管理職は大きいですね。本当に大きいと思います。人間性というよりも、保育観などの影響が大きいです。
あとは、そうですね…
いや、管理職ですね。
なんでかいうと、園の雰囲気って大きいじゃないですか。それを変える可能性があるのは管理職なんですよ。
トップが変わっただけで、何十人の雰囲気が変わった園もあるんです。それまでは、悪口が基本、陰口が基本。みんなで言い合って、派閥があって……
その園が、上が変わった瞬間に、それが表に出なくなり…。そういうのはいいですよね。思うのは自由だけど、職場づくりとは線を引くというのが大人ですよね。そういう文化・風土をつくっていける管理職者がいたことが大きいと思いますね。
本当はひとりひとりが大事なんですけど、それをいったらきりがないので。
あと、よく男性保育者の存在は、大きいとは言われていますね。
―― あーーー、確かに!それは絶対大きいと思います!
園の壁を超えた、学びの仕組みの可能性
―― ちょっとずれた話かもしれないですけど…
例えば、リクルートという会社がありますが、ここは提携している代理店(リクルートの商品を扱う会社)がたくさん有るんですね。今はどうかわかりませんけど、その代理店の新卒社員が、リクルートで1年間学んで、元の代理店に戻るっていう仕組みがあったんですよ。
今思うと、これは良い仕組みだったなと思っていて。
もちろんリクルートと代理店が関係性を深められるというのもありますが、”リクルートの営業” という、ある程度しっかりした仕事のベースやスキルを代理店の新卒社員が学んでいけるじゃないですか。
そういう学びの仕組みが、保育の世界にもあったらって…。
アイディアベースですけど。
例えば、国でめちゃめちゃいいと推奨されるモデル園があって、そこで一定期間学んで、自園に戻る、みたいな。
先生たちも、何年か勤めたら、学びなおしの期間があっても良いでしょうし、どこか外で研修したり、国内留学したりする制度があったらいいのではと。
かずませんせい めちゃめちゃ面白いですね。
―― みんなが、かずませんせいみたいに自分で他の園に電話かけるって、出来るわけじゃないですから。
それどころじゃない人も多いと思いますし、自ら動く人と動かない人がいて、そこに保育の質が左右されるなら、仕組みをつくっちゃったほうがいいかもと…。
希望制にしてもいいし。向上したい人や、保育のプロとしてもっともっとキャリアを積みたい人ならば、そういう制度があったら手を挙げるだろうなって。
それに、外の世界を知ってもらうのって、とっても大事だなって。
先生って、一旦会社員をやってまた学校へ戻るような制度ってあるんですかね?
1年間とか、ある程度の期間に先生が民間企業で、教育とは関係ない職種の、例えば営業として働くとか。
仕事の内容的にも、頭の使う部分は大分違ってくると思いますが、違う何かを吸収して、また教育現場に入ると、元居た教育現場が全然違う世界に見えたりするんじゃないでしょうか。
その逆も有ってもいいでしょうし。外側の人が入ってくるだけで、学校現場に新しい感覚が生まれると思うんです。
かずませんせい その話題はタイムリーに取り上げていて、外部の人に保育・教育現場に来てほしいっていう話をしていました。
まだまだ効率化されていないことがあるじゃないですか。例えば、まだ手書きだったの?とか、それって外部の人が見たら異様じゃないですか?
でも、外部の人が指摘してくれたら気づけるし、保育業界の人が別のところに行くのもありですけど。
そういう融合はおもしろいですよね。色々とクリアする難題があると思うけど、1個ずつクリアにして実装したら、どうにかなる気がするな。おもしろい。
―― 今、副業は結構解禁されてきているじゃないですか。国もしていいよって、むしろ推奨しているし。
今、私が勤めている会社って、副業したい人が見る求人サイトの運営をしているんですね。要は、副業案件を紹介する会社です。
ユーザーは比較的年収が高めの人が多いのですが、結構なボリュームの仕事を、低単価で引き受けてくれたりするんです。その方の年収を考えたら、そんな安い値段でいいんですか?って感じなんですよ。
でも、なんでやるかって、お金よりも “やりがい” を求めている人がいるということなんだと思うんです。『自分のスキルを活かせるなら』『誰かの役に立てるなら』っていう人が結構いるんです。だから、保育現場の仕事はやったことがないですけど、システム化だったり、業務効率化などが得意な外部人材とうまく協働できたら、違う視点で改革が進み、保育業界がもっと変化していけるかもしれない。
かずませんせい 本当に。小学校とかもそうですけど、「未だにそうなのか!」っていうことがいっぱいありますから。
―― 業界を知らない人なら疑問を持って見られるから。
「なんでやってるか?」って掘り下げると、実はなくてよかった、みたいなね。
かずませんせい わかりやすい例でいうと、座高の計測とかですかね。
これ、最近なくなったんですよ。なくなった理由が、「今までやってた理由がなかったから」っていう(笑)。
足短いのが判明しただけ(笑)。おもしろいですよね。そういうのが、ありふれているんですよね。そこを知るって、他を知るところから始まりますよね。
―― かずませんせいって、保育現場での仕事も出来ちゃうんですけど、もしかしたら外の世界と保育業界をつなぐ仲介人みたいな存在になっていく…?!
かずませんせい そうですね、僕がどこまで知ってるか分からないけど、何かしらの、つなぐ役にはなりたいんですよね。
工業高校出身ということも1つあるし。エクセル、ワード、パワポが触れない人って、保育現場にはめちゃめちゃいるんですよ。僕もたいして使えるわけじゃないですけど、ある程度のことは伝えられたり。
―― いろんな園を見てるいから、園同士の学びのネットワークみたいなものがつくれたら面白そうですよね。
かずませんせい 実は、ちょっと考えてるんですよ…。
Vol.7へつづく
今回も、保育者や保育業界の変容についてお話を伺いながら、一緒に考えていきました。
その中で、外の世界との融合、外の世界とつながることの重要性が見えてきた今回。
「いい園だな」「さわやかな空気を感じる」
そのように思える園は、教育内容も大切ではありますが、外の世界とうまく関わり、外部の視点を上手に取り入れている。そのような要素も、とても大切なのではないでしょうか。
そして、融合やつながりを仕組みに出来たらという話に。
これまで、様々な園に自らコンタクトを取り、見て触れてきたかずませんせいだからこそ、園同士のつながりをコーディネートできるのでは?という問いかけから見えてきた、かずませんせいの今後の構想を次回は引き出していきたいと思います。
次回は、いよいよ最終回。かずませんせいが、これから先どこを目指すのか?伺っていきたいと思います。
インタビュアー:西 由紀子
写真/文章:塚田 ひろみ
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