とびきりハッピーな空気と笑顔とダンスで、保育現場に癒やしとパワーを届けている、株式会社 ぎゅぎゅっとハッピー 代表取締役のゆうちゃんこと三原 勇気さん。
現場に立つゆうちゃんだけを切り取れば、明るさ、躍動感、楽しい空気、そんなキーワードが頭に浮かびます。
でも、誰にでも自分自身をかたち作っている、表面的には見えない事があるもの。
今回のインタビューは、<目の前の一人の人物を、丁寧にとらえていくこと>を、企画を通して行ってみたい。そんな想いでお届けしています。
そしてその視点は、保育で子どもたちや同僚のみなさんを見つめていくときにも、家族や友人、身近な人と触れ合うときにも、きっと力になってくれるでしょう。
そして、実際にお話を伺ってみると、やっぱり特別な体験をしてきたからこそ、今のゆうちゃんがあると確信しています。
第1回目は、ゆうちゃんといえば「教えない研修」。
保育士処遇改善の制度も相まって、保育現場の先生たちは忙しい現場の合間をぬって、様々な研修を受けていらっしゃるのではと思います。その多くは、保育に必要と考えられている「教え方」を学ぶもの。そして講師の方にそれを「教えてもらう」というスタイルがまだまだ主流ではないでしょうか。
では、「教えない研修」とは?
実際の研修でのエピソードも交えながらお話を伺いました。
「教えない研修」とは?
―― 私たちも、先日オンラインで「教えない研修」を体験させてもらったり、研修現場を見学させていただいて、本当に素敵な場でした。
ゆうちゃんはいつも最初に踊ってから研修をスタートしますよね。それは何か理由があってやってるんですか?例えば、カームダウン効果とか。
ゆうちゃん そうですね、どちらかというと、チアアップですかね。自分のパフォーマンスを最大限120%、180%発揮できるときって、あんまり考えずに、めっちゃ楽しんでるときなんですよ。
意外と理論的に考えてしまう癖もあって、そこをとっぱらうために「えい!!!」って踊っちゃったら右脳(感性の脳)にばっと切り替わって、自分も楽しいし、みなさんも笑顔になっていただけるかなって。
みんなで、考えるんじゃなくて感じるようにシフトできたらっていう、ねらいがあります。
ーー そういう理由なんですね!「感じる」、いいですね。
私たちも実際に保育現場に入っているんですが、手遊び、うた、ピアノ、制作、身体表現、絵画、、、これ、<全領域やらないといけないんだ>って、先生たちはみんな負荷を感じているように思ったんですよ。
「私はここの領域が得意だからできるよ。だから、あなたが得意なここの領域を担ってくれたらいいな。」っていうように、得意分野を中心としてやっていけばいいんだっていうことを、ゆうちゃんの研修を受けて、すごく気づかせていただきました。
やっぱりどうしても人間、自分の足りないところに目が行って、いいところに目が行きにくいんですが、「足りないところは誰かがやってくれているんじゃないか」って、すっと自然に思える、すごく素敵な研修だなって思いました。
ゆうちゃん ありがとうございます。そのご感想、嬉しいです。まさに自分が伝えたいことだったりするので、とても嬉しいですね。この気づきや感想が、人それぞれいい意味で違うっていうのも、すごく面白いですね。
自分は「教えない」を目指していますが、逆に、すごく研究をされていたり、指導的な立場の先生が、「こうしたらいいよ」っていう風に伝えていくことも、すごく大事だと思います。
それはもう、僕のできないことなので。
別の領域でそれぞれ大事なことをやっていけたらって。その中で、自分の役割として1番大事なことは、皆さんに気づいていただく。
そのそれぞれの気づきを大事にしたいって思っています。
自ら気がついて行動したことは、取り分が全て自分になる
自分自身の経験としても、「これやってみよう」って思った時とか、何かにチャレンジしたいと思った時って、やりたいと思ったことに付随するように、「あ、じゃあ、あれもできるかも」「こんなやり方もあるな」とか、いろんなことに気が付いて、可能性が拡がっていくんです。
今まで、自分が自分に制限をかけていたことなんかにも気がついたり。そういうときって、行動に繋がりやすいのかなって思っています。
この、ご自身のことに、ご自身が気づいていく、それが「やってみよう」というアクションにつながっていくことって、結果はどうであれ、取り分が全部、自分になるんです。
逆に、「誰かに言われたから、教えてもらったからやった」っていう風になると、「◯◯さんから教えてもらったことだから出来たんだ」ってなっちゃう。
もちろん、自分で行動した部分もあるけれど、パーセンテージで例えたら、50%は自分、50%は誰かのおかげ。で、自分の取り分は50%みたいに、無意識になりがちだと思うんです。
でも、自分で気づいて自分で行動したら、もう100パーセント自分で行動して生まれた結果ですっていうところに繋がります。
そうなったら、「あ、自分できるやんか!!」って思って、それが無限に続いていくなって思うんです。
今、この場にいる自分を、全肯定して、抱きしめられる
ーー 今まで研修をやってきて、一番印象に残っているエピソードってどんなことですか?一番じゃなくてもいいですけど。
ゆうちゃん 以前行った研修のはじめに、「今のあなたに何点をつけますか?」っていう質問をさせていただいたんです。
その時に、「私は80点です」とか、「60点です」とか、いろんな声がありました。
で、ある1人の方が、「私、 自分に点数つけられないです」って、ちょっと、暗い表情でおっしゃってたんですよ。
「あ、そうなんですね。点数がつけられない、それもオッケーですよ」って、「そんな気持ち、伝えてくださって、ありがとうございます」っていう風に、最初は受け止めてました。
様子を見ていると、やっぱりちょっと暗い表情をされてる時とか、つらそうにされてる姿も、ちょっとお見受けしたんですね。
その研修は、自分自身の過去、保育士になった原点・きっかけ、思いなんかを掘り下げていって、仲間に伝え合って、聴き合って応援するっていう流れでした。
そして、応援カードをお互いに書いてプレゼントするっていう内容だったんですけど。
そうしたワークを通して、最初にお話ししたその方は、スタート時点では言葉数は少なかったんですが、だんだんと言葉が増えていって、アウトプットがすごく増えてきて、表情も、こう生き生きとされてきて!
そして、保育の原点をお話される時に、「実は、学生時代に保育士資格を取って、本当は現場で働きたかったけど、今までずっと別の仕事をしてきた。本当は保育士として働きたかったけど、働けなくて、諦めてたんです」ってお話してくださったんです。
でも、このまま人生を終えるのは嫌だなと思って、50代になって初めて、保育園に飛び込んでみたんですって。ずっとやりたかったけど、できなくてっていう、その葛藤や、自分なんかにできるのかなっていう思いに悩みながらも、チャレンジしてみたんですって。だから、今、すごく楽しいんですっていうのを、涙を流しながらお話してくださって。
保育の仕事はもちろん楽しいけど、初めてのことを、この年代でやってみることの不安とか、うまくいかない葛藤もあって、悩むことももちろんあります。でも、すごく生き甲斐を感じてます。
ということを涙ながらに語ってくださって。
それで皆さんも、拍手喝采で、応援カードをプレゼントして、すごいあったかい場になったんですね。
最終的に自分のことに点数をつけられないっておっしゃったその方が、最後、笑顔で、
「今日この研修を受けて、胸張って言えます。私はもう100点満点です。」
っていう風に、伝えてくださったんです。
その時に、自分も、もう涙が出てきて、 ほんとに、すごく、嬉しいというか、言葉にならない気持ちになりました。
自分に点数をつけられないっていう風に、ネガティブなこと、上手くいかないことにフォーカスしていた方が、そんな自分も含めてオッケーを出した。自分の新たな人生の選択をして、今、この場にいるっていう自分を、全肯定して、抱きしめられているっていう、 それに、笑顔で100点満点って言ったその方の想いに、すごく感動しました。
ーー すごい!!!
ゆうちゃん ありがとうございます。
今、自分に低い点数をつけて、もうダメだと思ったり、やってるけどうまくいかない、そっちにフォーカスしてる方ってたくさんいらっしゃると思うし、自分自身も、勿論そうなる時もあるんですけれど。
だからこそ、 できてることとか、頑張っていることにフォーカスしたり、仲間から温かい言葉をもらったり、うまくいかないことがあっても、「今を乗り越えている自分に乾杯!」みたいな、そんなことを感じられるような研修を、もっともっとやっていきたいな!って、その時すごく思いました。
毎回、毎回、ゆうちゃんの研修現場では、奇跡のような出逢い、心の変化が起こります。今回は、その一部をシェアしていただきました。
そんな素敵な研修は、どうやって出来上がっているのでしょうか?
ゆうちゃん曰く、全ては「保育から学んだこと」なのだそうです。
次回は、保育を通した体験と、研修がどのようにつながっているのか?具体的に伺っていきたいと思います。
インタビュアー:堀井 理恵子・塚田 ひろみ
写真/文章:塚田 ひろみ
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