前回のVol.1では、不安や悩みを抱えていた保育士さんが、たった1日で、胸を張って自分自身に「100点満点」をあげられるまでに変化した、ゆうちゃんの奇跡のような研修のことを教えていただきました。(前回の記事はこちらから)
ゆうちゃん曰く、その「教えない研修」は、保育の仕事に携わり、子どもたちと過ごす中で学んだこと、子どもたちに教えてもらったこと等が、ぎゅぎゅっと詰まって出来ているとのこと。
では、いったい保育のどんな学びが、大人を対象とした研修につながっているのでしょうか?
いくつかの大事なエッセンスを教えていただきました。
「教えない研修」は保育以外でも求められているのでは?
ーー ゆうちゃんの研修は、保育業界以外の方からも、ニーズがあるんじゃないでしょうか?自分自身のことも、職場の仲間のことも心から認めて、応援しあえるって、どの業界でも、チームづくりや生産性にも影響するような、大切なことですよね。
ゆうちゃん 僕自身も、保育業界だけではなく、外の世界にも発信していきたいってすごく思っています。異業種の方に、保育の魅力だったり、価値だったりを知っていただきたい。
それがあるからこそ、研修の内容は保育の中で自分自身が学んだことを、たくさん取り入れているんです。子どもたちから教えてもらったことや、自分が保育の現場に身を置く中で感じたこと。
そうしたことを、プログラムの中に組み込んでいます。
このプログラムを業種を超えたたくさんの方に知っていただいて、研修を体験していただいて、効果が出たら、逆説的に保育で学んだことって大切なことだって言える。子どもたちから学んだことは、すごく重要なことだって、言えるんじゃないかって。
まずは、自分が相手に心を寄せていくことから
ーー わー、すごい!私たちも、保育を通した人との関わりの尊さを広く知っていただきたいです。具体的に保育から学んだことって、詳しく伺ってもいいですか?エッセンスでも構わないのですが。
ゆうちゃん そうですね、まずひとつめは、教える必要がないっていうこと。子どもたちに何かを教える必要はなくて、子どもたちが感じる・感じ取る中で、必要なことに自分で気づいていけるように、いろんな体験や環境をつくっていくというのが保育者のお仕事なのかなと思っていて。
必要なルールや危険なことをお知らせするのはすごく大事なことだと思うんですけれども、それも教え込むと言うよりは、知らせていく、伝えていくっていうニュアンスなのかなと。
すべての子どもたちは、自らのタイミングで、自ら必要なものを学びとる力のある存在なんだっていうことを保育の現場ですごく感じていました。子どもだけじゃなくて、大人も同じ人間で、その大きいバージョンの大人にも、何か教え込む必要はないのかなって、そう思ったときに「教えない研修」っていうのをコンセプトしようって、思ったんです。
子どもたちにも、大人のみなさんにも、すべてが備わっていて、想いも持っていて、そこを自分が他者として客観的にどう引き出すか?というところにフォーカスしようって思っています。
保育では、子どもたちに好きなこととか、得意なこと、興味があることを、大人が教えるって、しないじゃないですか。そうではなくて、心を寄せて、同じ目線になって、何が好きなんだろう?どんなところに興味があるんだろう?この子は?って、一緒に考えたりしますよね。
すごくお花に興味がある子だったら、お散歩のときに「このお花きれい…」って10分くらい立ち止まって見ていたりします。そんな姿を見て、◯◯ちゃんはこんなにお花に興味を持っているんだな…って、そこにまずは心を寄せていく。そして、どうしたら◯◯ちゃんのお花への興味が育っていくだろうか?という想いを持って、この先の活動を一緒に考えていったり。
そんな関わりを通して、自分の世界を自ら広げていくことができるっていうことも、保育の中で思ったんです。
それって、大人である保育士さんや先生に置き換えたときにも同じです。眼の前にいるこの方は、保育に対して、どんなことを大事にしながら向き合っているんだろう?って、まずは心を寄せてみる。
心を寄せて関わっていく中で、相手が自ら自分の世界を広げていき、自分で可能性を広げていける。だからこそ、まずは相手に求めるよりも先に、自分から”心を寄せていくこと”が大切。
僕が引き出し役になりながら、大事にしていることを全部出していただいて、その全部を、まるっと、まるごと受け止めていく中で、その方をもっともっと好きになっていくっていうことから、スタートなのかなって思いますね。
〜自らの在り方で示したい〜 ゆうちゃんが大切にしたいこと
ーー 本当に素敵ですね。
講師であるゆうちゃんが、目の前の一人の先生と、その先生の大事にしているビジョンや想いを受け止めていくと、その受け止める姿勢って、周りの先生にも伝わっていく気がしました。
「この先生は、そんな風に思ってたんだな」ってフラットに見られる気がしたんです。やはり、ぶつかっちゃうことが多いじゃないですか、保育観って。
でも、ここで共感や相互理解が生まれることで、全く違う考えをもっている先生が居たとしても、理解していける、周りと支え合っていけるっていう視点が、自然と生まれていきそうです。
ゆうちゃん ありがとうございます。確かに、研修の中ではそうした場作りってことをすごく大切にしています。この研修の時間は、安心安全の誰もがアウトプット出来る場所。想いを出しても良いんだって思える場所を、いかに自分が作るかだなと思っていて。
それには、自分が最大級にめっちゃ楽しむ!だったり、自分が大事にしていることを、まずは自分自身が在り方として証明していくことだと思っています。
ーー 在り方で伝えるというのも、保育での子どもたちとの関わりに通じることですね。
自分が大事にしていることを、ご自身が体現するということですが、ゆうちゃんが大事にしていることって、他にありますか?
ゆうちゃん そうですね。どんな気持ちも受け止める、ですかね。
すべてをネガティブにジャッジしたりせずに、どんな気持ちも受け止める。
例えば、研修の中で、なんかもう、腕組みして参加しているような方も過去にはいらっしゃって。でも、これも受け止めるってことを大事にしていて、勝手に「態度が悪い」とか「面白くないのかな」とか、そういう変な想像もしないようにしています。
逆に興味を持って、「何がそうさせているんだろう?」とか「どういった背景があるのかな?」と、その方がどんなことを考えていらっしゃるのか、やはり心を寄せるっていうことを大事にしています。
この日は、僕の研修の冒頭にするダンスのときに、「みんなで一緒にダンスをしましょう」という流れになったのですが、この方は、全然動かずに、腕組みのままだったんですよ。
「楽しくないのかな」って一瞬思ったりしたんですけど、まあ、それもそれでオッケーで、受け止めて。
しばらくして、研修の中で、何か問いかけをしたときに、みなさんシーンと誰も手を挙げないときがあったんです。そうしたら、その方が、意気揚々と手を挙げて、発言をしてくださったんです!
そのとき、思い込んだり、決めつけるのはもう、やっぱり必要なかったなって。その方に心を寄せて、その方の背景を想像したり、すべてをまずは受け止めてみるっていうのが大事なんだと思った次第で…。
それで、後からの話なんですけれど、その研修の最後に振り返りを兼ねてアンケートを記入してもらったのですが、あのときのダンスについて書かれていたんです。
「ダンスは、あの、実はちょっと恥ずかしくて…」みたいなことが書かれていて…。
あんなにムスッとしてたのに、可愛いやんか!!!と思って。
それも、保育の中で学んだことなのですが、どんな参加もオッケー。
別に、参加することが正義ではなくて、見ている中で感じることもあるし、遠くの方で見て、聞いて、何かを感じることだってある。その子のタイミングがあるから、今、強要する必要は無いし、信じて待つ、見守る。
なので、眼の前の相手が子どもであっても、大人であっても、自分はそう在りたいなって思います。
Vol.3につづく
ゆうちゃんが保育を通して学び、外の世界にも伝えたいと思うこと。
それは、子どもたちには、そもそも教える必要がないということ。大切なのは、目の前の一人の人に心を寄せていくこと。どんな気持ちも受け止めること。
この関わりは、その人をもっともっと好きになっていくことに繋がっていくことを、エピソードを通しても教えていただきました。
そうして心を通わせる事からがスタート。
相手に「こうしてほしい」「こうなってほしい」と求めるのではなく、まずは自分から心を寄せることで、相手の人が自ら動き出す。他でもない自分の力で、自分の世界や可能性を広げていくことができる。
保育に限らず、大人同士、共に信頼し合い、良い仕事をしていくことにもつながるのではないでしょうか。
こうした学びを保育から紡ぎ出し、研修として伝えられるのは、ゆうちゃんが保育の真髄を体現してきたからこそ。
そして、ご本人も若干9歳で保育が天職だと直観し、歩みを進めてこられました。
それでは、そんなゆうちゃんがどうやってこの世に生を受け、成長し、今に至るのでしょうか?
次回は、ゆうちゃんの生い立ちから、天職に巡り合うまでを伺っていきたいと思います。
インタビュアー:堀井 理恵子・塚田 ひろみ
写真/文章:塚田 ひろみ
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