【インタビュー】研究者であり、現役保育者である”かずませんせい”のキャリアパスVol.5

保育者が長くキャリアを継続するために

 

前回のVol.4では、保育という職場の難しさについて、他の職種とは異なる特性に触れながら、かずませんせいにお話を伺ってきました。(Vol.4はこちらから

 

給与や業務量。そして特に、人間関係については保育業界特有の閉鎖性が難しさを助長していくのではないか?というお話。
更に、ただ性格が合わないということに留まらず「保育観のズレ」という難しさがあること。

 

今回は、その難しさをいかに超えていくのか?というのがテーマです。

 

日々、現場に立つ保育者さんたちに「どんなことを大事にしてほしいですか?」という問いから始まった今回は、保育者という個人に焦点をあてながら、キャリア継続につながるポイントについてお話を伺っていきました。


保育者がキャリアを継続するために、大事にしてほしいことは…?

 

――  今まで色々とお話を伺って、ミックスジュースみたいな感覚なんですけど(笑)。

かずませんせいは、結局のところ保育者さんを応援していくっていうスタンスが強いのかなって思ったんですね。どういうことを彼ら・彼女らに「大事にしてほしいな」って、思っていることは何かありますか?

 

かずませんせい  そうだなぁ、「大事にしてほしい」かぁ。

 

――  例えば、園を辞めそうになった時。保育者が、辞めるか辞めないかの瀬戸際にあって、何があったら、ふっと、立ち止まれるのかな?って。

 

かずませんせい  プライベート!!!

プライベートを充実させてほしい。

 

――  あぁ、なるほど!じゃあ何かを我慢しちゃってる状態ってこと?抑えているというか。

 

かずませんせい  まず仕事って、基本的に嫌だから辞められる、ということではないじゃないですか。一定の負の感情は、どの業界・どの仕事でも感じることだと思うんです。それは当たり前のこと。そこはもう“0”には出来ないわけですよ。

 

その中で、楽しみがないとやっていけないというのも事実ですよね。保育者になる人って、「子どもが好き」が動機になっているから、日々感じるワクワクとか、学ぶ・得るものは多いと思うんですよ。でもそれよりも、負の部分が勝っているから、辞めていくわけで。

 

だから、その差を埋めるのは、プライベートじゃないかって。本来なら、お金の面とかでも改善されていくといいですよね。辛いけど、お金はもらえる、みたいな何かが。それがなかなかもう…、限界があるから、辞めちゃう。

 

日々の仕事では、良さもあるけど悪いところもある。そこを埋めるのは、プライベート。でも一方で、プライベートを充実させられる人は、不満とか辛さもそこまで無かったりするんですよね。

 

もう不満・辛さがマックスになっちゃってる人って、自分の業務以外の時間を割いて、制作物を考えたり、計画を立てるために図書館で資料を見て考えたり。そんな中でプライベートも楽しめなくて、もう負のスパイラルになっちゃってる。だからプライベートを充実させてほしい。

 

けど、自分一人でどうにかするのも限界があるから、僕がSNSとかで、「もっと効率化できるよ」、「あなたの負担は減らせるよ」、って伝えていければって思っています。だから、大事にしてほしいのは、プライベートが大きいですかね。

 

保育者を応援したいと発信しているかずませんせいのSNS保育の負担を軽くする投稿も多く含まれています

大事にしてほしい、もうひとつのこと=専門性の高さを自分たちが感じていくこと

 

あとひとつは、もっと「有能だよ、あなたたちは」っていうのを自分で感じてほしい。自己肯定感みたいなものですね。あなたたち保育者は、「すてきな職業」とか、「いい人」で終わらないくらい、専門性が高いんだよっていうことは伝えていきたいですね。

 

日々、無意識に子どもと関わって、楽しく遊んで。それは外から見たら、「楽しく遊んでるだけ」と映るかも知れないけれど、楽しく遊んでるだけができない人がどれだけいるんだろう?って。それが出来ている時点で、あなた達はすごいんだよって。

 

そこに加えて、子どもの発達を捉えて、クラスには30人もの子どもたちがいて、そのダイナミズムをうまく理解しながら、子どもにうまく対応して、しかも即時的に。瞬間瞬間じゃないですか、喧嘩とかが起きるのは。

 

それを日々やっているあなた達はすごいよって。それをあなたたちは、もっと自覚していいんだよっていうのは伝えたいというか、大事にしてほしいです。自分の有能感、自己肯定感というのを自己覚知すること。そこはもう、頑張らなくていいくらい、立派な方々が多いので。

 

保育者に大切なマインドセットは学べない?

――  なんか、マインド・マインドセットな気がするな。大学でそういうのって教わらないんですか?保育者を目指している学生さんたちに対して、今お話してくださったような、心の持ち方とかを教えるって、やらないんでしょうか?

 

かずませんせい  やらないですねぇ。

 

――  やらないかぁ。なんか、そこがすごい大事な気がして。

プライベートも、自己肯定感も、結局その人の思考というか、ものごとの捉え方で結構変わる気がするんです。プライベートが充実する人って、すでに仕事もうまくいっている。

結局、何に対しても「うわ、困ったな、辛いな」ってなっちゃうマインドの人は、仕事も、プライベートも、自己肯定感にも課題があって。その発想自体を変える、発想の転換になるようなマインドの持ち方を、学生のうちに教える授業があってもいいと思うんですよね。

 

 

かずませんせい  あってもいいと思いますね。

感情労働というか、対人援助職ならではのことって、学ばないというか。「保育とは」というところからスタートするので。

マインドセットを学んだからと言って、現場に出て、完璧にやっていけるわけでもないですよ。でも、やっておくのと、おかないのでは、やっておくに越したことはないですよね。

 

――  例えば、もっと一般的な企業なんかだと、<マネージャーになる人は部下の心理を理解する必要がある>、そういう認識があり、部下の心理を学ぶ機会を会社が用意してくれたりするじゃないですか。

 

かずませんせい  そうですよね、メンター制度なんていうのもありますし。

 

――  そういう教育の機会というか、先生たちの学ぶ仕組みがもっとあれば、もしかしたら…なんて思ったり。

 

かずませんせい  今ちょうど、保育者のキャリアについての研究をしていて、保育者のキャリア形成の固有性といったものも分かってきて。

まず、今の話でいうと、メンター的な存在がいないっていうのがひとつ。それって、専門職だからいないというわけではなくて、例えば、看護職とかにはプリセプターシップという制度があります。それはメンターと似ていて、先輩看護師が1年目の看護師を指導してくれる。要は、指導者が明確なんです。

 

でも保育者はそういうのが一切なくて、組んだ担任の先生が教える。だから、そこでまず合わなかったら上手く行かない可能性が高いし、暗黙の了解的に先輩がクラスの中で教えるみたいな感じで、曖昧で抽象度が高い指導形態がある。それが特殊ですね。

 

――  もしかしたら先輩が教えるのが向いてないかもしれないですもんね。

 

かずませんせい  そうです、そうです。

 

――  元々、私は年下の面倒をみるのは大好きなんですよ。そういう人は、自分がつまづいたところなんかを、後輩にも教えてあげられるけど、そもそも教えることに興味がない人が、そういうことを出来るのかどうか…。好き嫌いとか向き不向きが絶対あると思うから。

何か知らないけど、教えなくちゃいけない状況を、やりがいと思うタイプと、めんどくさいと思うタイプと両方いると思う。

 

かずませんせい  本当にそれです。しかも、まだまだ学んでいる2年目が教えていたり…難しさはありますよね。

 

――  パイロットとかは、教官という教えるプロがいるじゃないですか。

 

かずませんせい  はい、大事ですよね。外部の人を招いてでも、心の持ちようというか、そういう研修をやってもいいんじゃないかって思いますね。別に先輩とかがやってくれなくても、外部の人を招いて、というのもいい気がします。

 

Vol.6へつづく


保育者が、今、この現状の中で、何か出来るとしたら?

そんなことが話題の中心となった今回。かずませんせいからは、「プライベート」「 “保育者の専門性” の自己覚知」という2つのキーワードをいただきました。

共通していることは、心のありよう、マインド(マインドセット)ではないか?そんな話にも進展していきました。

私たちは、NPO法人 NAGOMI MIND(ナゴミ マインド)として活動していますが、団体名に「マインド」とつけたことは、マインドから変えられる部分がたくさんあると感じているから。マインドひとつで、世界の見え方・捉え方は、いかようにでも変えていけると信じているからです。

これは、是非とも保育現場にも届けていきたいエッセンスです。

 

次回は、保育者一人という個人の枠を超えて、保育や業界が変容する可能性についてお届けしていきたいと思います。

 

インタビュアー:西 由紀子
写真/文章:塚田 ひろみ


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